(1)は、住宅地域で境界が数10センチずれた例です。隣の土地同士で境界の位置に争いがある場合はよくある例ですが、境界が移動した位置に争いがない場合で、多数の境界を一挙に再確定することは先例がありません。土地家屋調査士が全体の計画・測量を、弁護士が協定書の作成を、税理士が税務全般をそれぞれ担当し、行政との協力も得て実現しました。これは区画整理を応用した独自のノウハウで、市街地での地盤移動の先例となるものです。
(2)は、被災マンションの再建等に対する支援例です。被災マンションをめぐっては法律そのものに内在する問題や、再建方針をめぐる合意形成の難しさが多数のマンションで噴出しました。建築士がマンションの被災程度を診断し、不動産鑑定士が法律適用上の鑑定作業を行い、弁護士らが再建組合等における合意形成の手順を説明し、土地家屋調査士・司法書士が再建後のマンションの登記事務等を支援しました。
(3)は、倒壊した市場において、店舗兼住宅の共同建物を再建した例です。商業に携わる支援者たちを建築士が再建全体をコーディネートし、弁護士・司法書士らが複雑な権利関係を整理し、税理士が権利調整にともなう会計処理を行いました。
(4)は、小規模な建替え事例です。個人で行う建て替えではなく、共同で建て替え事業を行う際に土地の合筆・交換を必要とするような場合、土地家屋調査士、建築士、弁護士、税理士などの支援が必要となりました。
(5)は、組合が施行者となった市街地での区画整理です。市街地では住民の合意形成が困難なため、組合が施行者になった区画整理は先例がありません。また、小規模密集住宅地なので建築基準法の改正により建物の再築ができなくなったことから、住民が土地を提供し合って敷地を合筆し、マンションを建築しました。派遣された弁護士が法律全般を担当し、税理士が税務一般を担当しました。
3.支援の手続は、市民の支援要請に応じて相談や専門家の派遣を行います。相談件数は237件、うち相談のみは128件、取り下げ70件、受理39件、派遣された専門家は延べ245名でした。
4.復興まちづくりは長期間かかるのが通常ですし、様々な困難が伴いますが、これは法制度上の問題に起因する面があることも否定できません。
これに対する政策や制度の提言を行うため、平成8年12月14日に、関東・関西の公法、私法、住宅、都市計画の研究者15名と各専門家職能の実務家15名の計30名からなる支援機構付属研究会が組織されました。
研究会では約2年間にわたって研究活動を行い、その成果として平成11年3月17日に『提言・大震災に学ぶ住宅とまちづくり』(東方出版)を公表・出版しました。